雲のすき間から斜陽が顔を出し梅雨の終わりをつげる雨上がりのQXスタジオ。
モニターは古い映画が垂れ流され、スピーカーからbeatがloopされている。
beatを聴きリリック綴る仙人掌。
床に散らかったレコードや雑誌と同化している。
ソファで煙を燻し曲の編集を進めるQX。
こんな調子が昼下がりから続き2人の集中力が切れかけた時、LOOPの途切れたタイミングで映画の台詞だけが聞こえてきた。
『オレ、もう終わっちまったのかな…』
『まだ、始まっても無ぇよ』
その刹那、QXが飛び起き咆哮した…
「オレだって終わって無いし!」
「てか、始まっても無いから!」
咆哮と同時にbeatのloopが始まり、咆哮はbeatに掻き消され、虚無感だけが残った。
虚無感が部屋に広がるなか、仙人掌がペンを置き
「クロくん!ビール呑み行こう!」
屈託の無い笑みだった。
QXは頷き、当てもなく2人は街にくり出す。
街が帰路に着く人を照らす頃、彼らは先に一杯かっくらう…
このEPは仙人掌とQROIXのサボタージュとメランコリックが自らの内を削り、堀探る様を詰め込んだ唯一無二のsmorkey town blues。
また暑い季節が始まろうとしてる。
text by Kyuma Kamikawa
■仙人掌(MONJU/DOWN NORTH CAMP)■
東京出身のRAPPER。知る人ぞ知り語り継がれる"WORLD’S END"の生存者。現在は夜な夜な地元のコンビニやラーメン屋をハシゴし、フッドをクルーズしながら日々音楽したりしなかったりしている。QROIXの実家のガレージに住んでいた経歴を持ち、アレコレソレで通じる旧知の仲である。話題の”1982S”、また巷で噂の秘密結社”WCB”の一員だとの情報も。
■QROIX(DOWN NORTH CAMP)■
中1の時にメジャーリーガーを目指しまずは足腰から鍛えるべしと考え陸上部に入る。中学で何度か表彰台に上がるうちメジャーよりもやっぱり個人で金メダルかなー?みたいなノリで調子こいて日本一強い高校に入るがすぐ挫折。
そんな時HIPHOPに出会い、今に至る。