2012年07月28日
『手に負えないサイケデリック・アヴァン・ジャズの世界にようこそ』
大谷能生に続く、ブラックスモーカー「エクスペリメンタル・シリーズ」第6弾は、JAZZ GODFATHER「鈴木勳」と「KILLER-BONG」による狂気の共演!
3/30にBLACK TERRORにて行われた奇跡のセッションを完全収録!
只ならぬ殺気を感じる。
鈴木勲とKILLER-BONGが3月30日にBLACKTERRORで行ったフリー・インプロヴィゼーションには、2人の音に対する厳しさ、強靭な意志、覚悟というものが宿っていた。
こうして、その日のライヴ音源を聴き直すと、感動や興奮よりも、畏怖や恐怖の領域まで僕は持っていかれてしまう。
鈴木勲は小ぶりなベースの前に立ち、KILLER-BONGは目の前の机にサンプラー、カオスパッド、カオシレーターを並べて構えた。
鈴木勲がベースの弦を鋭く爪弾き、KILLER-BONGがサンプラーを叩くと、26分間の音の冒険がはじまった。
鈴木勲がベースを疾走させると、KILLER-BONGはドラマーやピアニストに変身し、そして常に破壊的なダブ・エンジニアであり、動物的なヴォーカリストであり、狂ったラッパーであり続けた。
あの、ひしゃげたスネア・ドラムの音を僕は1週間前の夜にGRASSROOTSで聴いていた気がするが、KILLER-BONGはサンプラーにこの日のために、新しい音を入れていたのではないだろうか。
その引き出しと音の色彩感覚は無限に思えたし、このフリー・インプロヴィゼーションに参加しているのが、2人だけだったという事実に改めて驚かされる。そしてまた思うのである。これが、一流のインプロヴァイザーの対決であると同時に、渋谷のクラブのステージで実現したジャズ・ミュージシャンとヒップホップ・アーティストのエンターテイメント・ショーであるということを。
退屈なフリー・インプロヴィゼーションに引導を渡しているようだ。
前衛的でディープではあるが、キャッチーと言わないまでも、これは人を招き入れる音楽である。手に負えないサイケデリック・アヴァン・ジャズの世界にようこそ。(二木信)
■■■■プロフィール■■■■
鈴木勲
1933年 東京生まれ。1956年、アメリカ軍楽隊のキャンプでベースを弾く。東京自由が丘「ファイブスポット」のハウスバンドとして演奏していた時、1970年、アートブレイキーに見出されてブレイキーの待つN.Yへ単身渡米し、ジャズメッセンジャーズの一員として活動しアメリカ全土とヨーロッパを公演。合間をぬってN.Yのジャズメンと共演し交流を深める。レコードのリーダーアルバムは50枚を超えているが、オリジナルアルバム「BLOW UP」(TBM)「陽光」(KING)は日本ジャズ賞を受賞した。2009年スイングジャーナルで南里文雄賞を受賞。スイスのラジオRadio Jazz Internationalで世界のジャズミュージシャンから20傑に選ばれ「JAZZ GOD FATHER」の称号もらう。現在も鈴木勲 OMASOUNDの中で若手ミュージシャンを育て続けているが鈴木勲自身は感性を磨き日々練習を重ねて進化し続けている。